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身体障害者が補助運転装置を使って免許を取得する場合、現在の日本の免許制度では運転できる車について重量や排気量などが制限される。その制限を解除するのがまた大変な作業で、障害者が高級車などの大きい車に乗ることのできる免許を取得するのは容易ではない。
根底に障害者が運転する車は小さくていいんだという考えがあるのか、3月28日の船の科学館でのお披露目の時に一緒に展示された東京大学の研究中の車も「最高時速は落とすけれども…」とどうも一般の人とは違う道を社会は障害者に強制しようとしている。
そこでわれわれはジョイスティックコントロールカーが認可されるにあたり、小さい車を選定し第1号にすると、第2号からはそれ以上大きい車は認めない可能性があると判断した。例えば、第1号が軽自動車だとするとジョイスティックは軽自動車以外認めないという事態を懸念したのである。
それならばと大きい外車を選定した。幸い、ジョイスティックコントロールカーの製造では習熟の感があるアナフィールド社のもっとも得意とするべ一ス車はゼネラルモータース社製のアストロであった。このサイズの車なら運転席と助手席の両方に同時に2台の車椅子でアプローチできる。助手席側にも車椅子の固定装置をつけれぱ2台の車椅子を並列に固定することができる。そこで、結果的には実現できなかったが次の第3節で述べるような右側席での運転案が浮上してきたのである。

 

第3節 左ハンドルに関する考察

 

左ハンドルについても参加した方々から一様に抵抗感があることを伝えられた。しかし、実際に全国キャラバンで各地まで毎週のように運転してみると、左ハンドルについては「慣れ」の問題が大きく影響しているように感じられた。最初は不安げに運転していたスタッフがキャラバンの後半になると平気で運転できるようになったからである。そこでキャラバンの後半からはその経験に基づき、参加した人に「慣れ」について話したが不安は解消されないようであった。
当初、われわれが想定したジョイスティックによる運転席は右側であった。第2節で述べた車の大きさを利用し助手席側を補助運転席とし認可を受けてはどうかという案である。通常の運転席の脱着は健常者の大人でも大変な作業であるし、当然左ハンドルに対する抵抗感も予想された。また、車椅子ドライバーが体調不良などで運転を代わるとき、あるいは車検などのメンテナンスの時にも通常の運転席が残っている方が実用的と思われたからである。
しかし、アナフィールド社に改造を依頼するときには、新型の床下収納型リフトの開発が間に合わずつけられないことがわかり、旧式の折り畳み型のリフトになってしまった。結果、リフトの支柱が助手席の後ろに立つことになってしまい、これでは支柱が邪魔になって助手席へ車椅子で行くことができない。助手席を補助運転席とする案はここで諦めざるをえなかった。しかし車種を今から変えるわけにはいかない。不本意ながら左側の本来の運転席にジョイスティックコントロール装置をつけるしかなかった。
結果的に左ハンドルになってしまったのであって、左ハンドルを良しとしてきたわけではなかった。

 

 

 

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